瞑想とは

セレブ、大企業も導入!瞑想が世界的な人気

 瞑想は、世界的に流行しています。自律神経を整え、生産性やクリエイティビティを向上させ、かつ何の副作用も発生しない健康法としてビル・ゲイツ(マイクロソフト共同創業者)、故スティーブ・ジョブズ(アップル共同創業者)、ヒラリー・クリントン(米国次期大統領選に出馬)、アル・ゴア(元米国副大統領)といったエグゼクティブ、リチャード・ギアやゴールディ・ホーン、クリント・イーストウッドといった俳優・映画監督をはじめとするセレブリティも多く採用。大企業でもフェイスブックやグーグル、インテル、ゴールドマン・サックス、デパートチェーンのTarget社、大手食品メーカーGeneral Mills社といった有名企業、さらにペンタゴン(米国国防総省)などが次々と実践しています。

 超有名スポーツ選手でも、瞑想を取り入れる人物は多いのです。例えばイチロー選手、ノバク・ジョコビッチ選手、マイケル・ジョーダン選手、タイガー・ウッズ選手、日本人でも本田圭佑選手や長谷部誠選手などが取り入れていると報じられています。またメンタルトレーニング先進国の米国では、トレーニングの一環としてUSOC(米オリンピック委員会)オリンピック・トレーニングセンターにおいて瞑想(マインドフルネス)が採用されています。

瞑想の定義って何?

 瞑想について、よく言われるのは「マインドフルネス」という単語です。実際、上記した企業はほぼその名前で瞑想を取り入れているようです。しかし定義においては、マインドフルネス瞑想というのは現代風にアレンジされた概念なのです。実際には、大きく分けて『サマタ瞑想』と『ヴィパッサナー瞑想』の2種類があります。一般に言われる瞑想は、主に「サマタ瞑想」を指すことが多いようです。いずれもパーリ語で、上座部仏教の概念とされています。

『サマタ』とは「落ち着く」という意味。その名のとおり、心にすき間を作る、脳のデフラグといったイメージですね。座禅を組む「禅」は、ほぼこのサマタ瞑想に入るものだと考えて良いでしょう。一般によく行なわれる禅は、仏教では『アーナーパーナ・サティ』『安那般那念』という呼ばれ方もするようです。「入出息(呼吸)を意識する」ことで意識を鎮静させるものですね。

 一方、『ヴィパッサナー』とはパーリ語で「分けて観る」「物事をあるがままに見る」という意味です。サマタ瞑想によって「サマーディ(禅定)」状態を整えたうえで、入るものとされています。今から約2500年前、ゴータマ・シッダルータ(ブッダ)が悟りを開いた段階はまさにこの『ヴィパッサナー瞑想』に入るものとされています。19世紀、レディ・サヤダウによってミャンマー上座仏教の伝統的な瞑想法が伝えられたものが『ヴィパッサナー瞑想』として確立され、後世に受け継がれたとされています。なお、一般的に言われる瞑想とは異なり、この『ヴィパッサナー瞑想』は非常に高度な精神領域です。一般人は、まずこの領域に入ることはあり得ないと言っていいでしょう。この分類は、特に気にせずとも問題ありません。

アルファ波とベータ波の違い

 心が落ち着くと、人間の脳からは『アルファ波』が出ます。逆に、心が何らかの心配事で乱されていると『ベータ波』が出ます。

 ベータ波が出れば、仕事や勉強の効率は落ちてしまいます。例えば受験勉強中の失恋によって勉強まで手につかなくなったり、自宅に閉じこもって出てこない子どもを説得するうちに職場に遅刻してしまったり、老父母の介護に振り回されて仕事の重要書類の送り先を間違えてしまったり……全く同じでなくとも似たような経験は、大小誰しもあるのではないでしょうか。こういう時、脳からはベータ波が出ているのだと考えられます。

 瞑想とはまさに、このベータ波が出ている状態から、心を落ち着かせてアルファ波が出るような状況に持っていく効果が見込めます。

瞑想に科学的根拠はある? ない?

「瞑想なんて心の持ちようにすぎないでしょ? 科学的根拠はないですよね」とお考えの向きもあるかもしれません。しかし今から13年前となる2003年、ダライ・ラマ14世を招いてマサチューセッツ工科大学で開かれた『精神の研究』の会議において、興味深い研究結果が披露されました。数十年にわたって修行を積み重ねてきた僧侶の脳を分析した結果、幸福や苦痛の少なさといった部分を示す度合いは、一般人のそれに比べてはるかに高いことが示されたのです。

 ある僧侶の脳を、瞑想を行なっている最中に測定したところ、前頭葉前部皮質の左側に非常に活発な活動があったことが示されました。この部位は幸福感、喜び、熱意と関連づけられており、快活な性格を持つ人物の脳によくみられる傾向だというのです。ちなみに、不安や鬱っぽさが抜けない人物は、前頭葉前部皮質の右側が盛んに活動しているケースが多いようです。

 もちろん、一般人に修行レベルの瞑想は必要ありません。それどころか、1日5分程度の瞑想であっても十分な効果は期待できます。「最近、カリカリしてるな」「物事に集中できないな」「仕事の成果が上がらないな」と考えている方々は、騙されたと思って一度実践してみましょう。