瞑想の方法(呼吸について)

現代人は呼吸が浅い

 瞑想を行なう上で最も基本になるのは、呼吸です。瞑想とは違いますがメンタルトレーニングでも、呼吸は非常に重視されています。一般的な深呼吸では先に息を吸い込んでしまう方が多いですが、メンタルトレーニングコーチは息を「吐ききる」ことを強調されていたりします。肺の中の空気をすべて外にだすことで、身体は勝手に息を吸い込みます。新しい物を入れるには、まず古いものを出さねばならないということですね。さらに深い呼吸をすることで、脳に大量の酸素が送り込まれます。これによって、脳をリフレッシュさせる効果も見込めます。

 現代人は、総じて息が浅いと言われています。忙しい日常を送っていると、どうしても普段自分がどのような呼吸をしているかに意識を向けることは難しいでしょう。これは、考えると恐ろしいことです。人間は呼吸が止まったら死んでしまうのに、それだけ重要な呼吸について意識できなくなっているわけですから。

 呼吸が浅いと、身体に十分な酸素が行き渡らなくなります。さらに現代人は運動不足でもありますから、結果として消化器が十分に働かなくなり、胃もたれや便秘、下痢、さらにむくみや冷えといった症状が起きる原因になります。現代人の生活習慣病には、呼吸の浅さが関わっている部分も大きいのではないでしょうか。

カンタンに行なえる深呼吸

 自宅でカンタンにやれる深呼吸の方法を、いくつかご紹介します。

 まずは寝転がって行なうものです。仰向けになって、おへその上に両手を重ねて置いてください。次に、大きく息を吐き出します。この際、大きく口を開けるのではなく、口をすぼめるようにしてゆっくりと少しずつ確実に吐き出していくと良いでしょう。「口笛を吹く」イメージです。水鉄砲の出口が小さいほど水が勢い良く飛ぶように、空気もまた出口を小さくすることでより出て行きやすくなります。

 吐き切ったら、口ではなく鼻から息を吸い込みます。ゆっくりと吸い込みながら、お腹を風船のように膨らませていきましょう。完全に吸いきったら一旦息を止めて、今度はゆっくりと吐き出していき、ふくらんだお腹をぺたんこにしていきます。これを3セットから10セット、ゆっくりとしたペースで結構ですので繰り返してください。

腹式呼吸のやり方

 呼吸には、肋骨を広げたり閉じたりすることで行なう「胸式呼吸」と、腹を出したり引っ込めたりすることで横隔膜を動かして行なう「腹式呼吸」があります。一般に、女性は胸式呼吸が多く、男性は腹式呼吸のほうが多いと言われています。

 腹式呼吸には様々なメリットがあり、例えば内臓脂肪の低下が見込まれます。横隔膜がよく動くことで内臓の血行が増し、新陳代謝を活発にする効果が見込まれるのです。また、有名なところでは声量のアップです。腹式呼吸ができれば、強い空気圧で息を押し出せるようになるため、結果として大きな声や通る声が出るようになります。力強いヴォーカルで有名な歌手は、例外なく腹式呼吸を身に着けていると言っていいでしょう。しっかりと習得することで、カラオケでも高得点を目指せるかもしれません。

 では、具体的な腹式呼吸のやり方を説明します。まず、仰向けに寝転んでください。次に、ゆっくりと口笛を吹くようにして体の中のすべての空気を、時間を掛けて追い出します。お腹が徐々に引っ込んでいくことを意識して下さい。そして吐き切った後は、鼻から深く息を吸い込んでいきます。この時、舌が上あごについていることを意識しましょう。これは東洋医学や気功法でいうところの「舌抵上顎(ぜっていじょうがく)」に当たります。舌を上あごに付けることによって、「白い血液」といわれる唾液の出がよくなることが期待されます。

 そして、再び口から息を吐きます。やはり口笛を吹くように、吸った時間の1.5倍から2倍の時間を意識して、長くゆっっくりと吐き出していきます。これを3セット~10セット繰り返しましょう。

腹式呼吸のポイント

 上記した深呼吸、腹式呼吸のやり方いずれにも共通しますが、息は「吸って吐く」のではなく「吐いて吸う」ことです。この順序を心がけましょう。また、寝転がって行なう際は、お腹の上に本を置くと良いでしょう。腹式呼吸ができているかどうか、確認しやすくなります。寝転ぶことができない環境なら、椅子に腰掛けて行なっても構いません。その際は、おへその下に両手を当てて、下腹の動きを意識することを心がけて下さい。

 呼吸法とは、あらゆる武術でも重視されているものです。例えば空手では、初心者に向けては「息を吐くことだけを考えろ」という指導を行なうことがあります。息を吐き出すことができれば、どんな人間でも息を吸い込むことができます。しかし初心者にとって、息を吐くということは意外と難しく、息を止めたまま突きを行なってしまうことが多いのだとか。

 あまりに当たり前に行なっているようで、誰もが正しいやり方ができているとは限らない。それが呼吸法です。まずは上記したようなやり方を試してみてください。