瞑想の方法(姿勢について)

正式な座り方は2種類

 瞑想を行なうにあたっては、姿勢も重要なポイントです。もちろん姿勢維持が困難な方もいますから、一概に「絶対にこれでないと」というものはありません。しかし、こういう姿勢を維持することによってより効果が出る、というものはあります。

 座禅の組み方には正式な座り方があり、結跏趺坐(けっかふざ)と半跏趺坐(はんかふざ)があります。前者は両足を組む坐り方で、右の足を左の股の上に深く乗せ、次に左の足を右の股の上に乗せます。後者は片足だけを組むもので、右の足を左の股の下に入れ、左の足は右の股の上に乗せます。ただし、こうした姿勢を組むことによって苦痛を感じるようでは本末転倒。あくまで、気持よく瞑想に入ることが目的ですから、正式な座り方にとらわれる必要はありません。

あぐらをかいてもOK

 例えば、あぐらをかいて行なうのもいいでしょう。その場合のコツを以下に記します。まず、ひざの上に手の甲を載せ、手のひらが見えるような形で座って下さい。さらに肩の力を十分抜き、自分の頭のてっぺんから空に向かって一本の糸が伸びているイメージをして下さい。

 その糸に身体がぶら下がっているイメージのまま、少しずつ上半身を左右にゆっっくりと揺らします。これは、自分自身が地面に対して「垂直になる」ポジションがどこかを知るために行ないます。ゆっっくりと揺れている振り子のような状態から、繊細な自分自身だけの感覚を頼りに、「あ、ここが垂直かな」という場所を見つけてください。ヨコのポジションが決まったら、同じように身体を前後にゆっっくりと揺らし、タテのポジションを見つけ最終的な位置を決めます。

 イメージは「三角錐が座っている」ようなものです。臍下丹田(おへそのあたり)、頭のてっぺん、右手と左手をむすぶとちょうど三角錐のような形ができます。このポジションを意識できたら、揺るぎない姿勢が保たれるでしょう。

椅子に座ってもっとラクな姿勢で

 上記のやり方でも難しい、という方の場合は椅子に座ってよりラクな姿勢で行なうこともできます。身体をリラックスさせるためならば、なんだっていいのです。

 まずはラクな姿勢で椅子に腰掛け、背筋を伸ばして下さい。ただ、椅子に座る場合でも重要なのは「地に足をつける」という気持ちです。座禅もそうなのですが、地面と空に対して繋がりを感じることが重要になります。椅子に座っている場合、足をきちんと地面につくように腰掛けます。テレビやラジオなどは切っておきましょう。

 次に、目を閉じて「いまの自分に起こっていること」に意識を向けます。自分は今息を吸っているのか、吐いているのか、換気扇の音や外の雑音、あすの予定などに意識が向いているならば「今、あれに気を取られているな」「今、この椅子に腰掛けているな」と考えること。決して「~~に気を取られてはいけない」ということではありません。詳しくは「④意識について」で解説します。

立つ瞑想法もあります

 他には、立って行なう瞑想もあります。これは先ごろ解説した『ヴィパッサナー瞑想』に入るものであり、立ち上がる姿勢から瞑想を開始します。まず、ゆっっくりと動きながら、自分の身体の動きを実況して下さい。

 立ち上がったら「背中を伸ばします」と言って背筋を伸ばし、手先を伸ばしながら「指を伸ばします」と言うなど。意識は、足の裏に向けます。地面に足がついていることを意識するためです。さらに、あごを引き、頭頂部を糸で引っ張りあげられているイメージをします。十分にイメージできたら、肩や背中などの余分な力を抜きます。

 立った後は、何も考えずに10分間ほど「立っています」「感じています」「立っています」「感じています」と頭のなかで実況して下さい。目は完全に閉じてしまわず、半開きのほうが良いでしょう。余分な力が抜けるため、肩こりや頭痛、腰痛などの予防にも効果的です。

歩く瞑想法のやり方

 ヴィパッサナー瞑想において重要なのは『サティ』(気づき)という概念です。人間は、妄想から逃れることはできません。ゆえに、現在の瞬間を捉えるサティを連続させていくことで、妄想が入り込む余地をなくし、過去や未来への余計な考えを手放します。『現在』のみに思考をフォーカスさせることができるわけですね。

 まずは先ほどの立つ瞑想法のやり方で立った後、最初は普通の速度で歩き出しながら、足全体の動きを感じます。「右」「左」「右」「左」と言葉をつけていくと良いでしょう。ただ、この声は「掛け声」ではありません。あくまで、自分が動いたことに対してサティがあるという順番が重要です。現在の瞬間を捉えることこそ、ヴィパッサナー瞑想です。

 ある程度歩いた後、歩くスピードをゆっくりとしてください。足を下ろす、地面につける、離れる、足が上がる、これらの動きの一つ一つに対して「上がった」「下りた」「地面についた」「離れた」といった形でラベルを貼っていきます。「これが唯一の正解」というものはなく、自分が感じたようにサティを言葉にしていくことで瞑想状態に入ることができます。